米株とドルが急落=米経済にとって8月は鬼門?
米株とドルが急落=米経済にとって8月は鬼門?
米労働省は雇用統計を発表したが、新規就業者数(非農業部門で軍人除く、季節調整済み)は事前予想のコンセンサス同13万5000人増を大幅に下回った。
先々週(7月26-27日)、2日連続して合計で520ドル(3.8%)急落して以来、今年で3回目の株価暴落である。米株市場は、もともとサブプライム不安で不安定な相場が続いていたが、この日は、信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズが、サブプライム住宅ローン債券を担保にした債務担保証券(CDO)の巨額の運用損失を計上し、サブプライム不安の元凶となった米証券5位のベア・スターンズの格付け見通しを引き下げたと発表したことも株価急落の一因になっている。
また、NY債券市場も長期金利が急低下した。雇用統計が弱かったことから、米経済は住宅セクターの低迷が景気を悪化させ、FRBは早晩、利下げせざるを得なくなるとの思惑が広がったことに加え、米株市場の急落で、安全資産の米国債が買われて、10年国債は前日比9/32高の98 1/32に上昇、債券価格と反対方向に動く利回りは前日比9ベーシスポイント(0.09%ポイント)低下の4.68%となった。
6月13日に5年ぶりの高水準5.32%から急低下してきており、市場では、まだ、米経済は最悪期を脱していないことを示していると見ている。次の8月の雇用統計も、7月31日に4億5000万-5億ドルの住宅ローン原資の不足が明らかになったと発表した米住宅ローン10位のアメリカン・ホーム・モーゲージ・インベストメントが3日、従業員を7000人のうち、6250人を削減すると発表したことから、さらに悪化する可能性が出ている。
そして、NY外為市場でも、米景気の先行き懸念とFRBによる利下げ思惑で、株価急落に連れ、ドルがユーロや円に対して売られ、急落した。ユーロ/ドルは、10日ぶりに1.38ドル台に上昇、一時、日中高値1.3820ドルを付け、7月下旬に付けた過去最高値1.3853ドルに接近し、結局、前日NY終値1.3699ドルから1.3810ドルで引けたが、ドル/円も同119.24円から117.99円へとドル安となった。また、ドル/スイスフランも同1.2042フランから1.1904フランに急落し、1日の下げ幅としては1年以上ぶりの急ピッチの下げとなった。
過去のデータを見ると、8月は、ドル/円レートは下落する傾向がある指摘する向きもある。8月に関しては、過去9年間のうち、8年間は、ドルは円に対し下落しており、1971年以来、8月の平均リターンは、マイナス0.42%で、今後は115.55円まで下落する可能性があるという。
市場、7日のFOMC声明文でインフレバイアス堅持かに注目
FRBは来週7日に、FOMC(公開市場委員会)を開くが、市場は100%金利据え置きを予想しているため、焦点はFOMC終了後に発表される声明文に移っており、インフレバイアス(金融政策に対する姿勢)が堅持されるかどうかだ。
これについては、先月末に、FRBのセントルイス地区連銀のウィリアム・プール総裁がミズーリー州での講演で、最近の米株急落や国債利回りの急低下、クレジット市場でのリスクプレミアムの急上昇などの市場の混乱について、FRBとしても市場の動向を注視しており、市場の混乱が明白に雇用やインフレの安定、さらに、金融市場の機能を脅威にさらす場合には、FRBは適切なタイミングで必要な金融政策を講じる可能性があると、バイアスの転換を示唆している。
ただ、同総裁は、最近の株価急落については、2001年9月11日の米同時多発テロ攻撃のときとは性質が違うので、まず、市場の自主性に委ねるべきで、FRBが率先して政策出動することには否定的だ。むしろ、「市場の混乱は、今後はある程度、自力で安定化するだろう」とも述べている。
その一方で、プール総裁は、「最近の金利先物市場で見られるように、市場はFRBが適切な行動を取る必要があるほど十分な証拠が出てくれば、必要な政策を講じると信じていると思う」とも述べ、また、同総裁は「FRBは、市場の混乱(株価急落など)が明白にインフレや雇用の安定を損なうか、あるいは、金融市場を脅威にさらすようなことになれば、市場の混乱に対して、適切な政策を取るだろう」としている。
今回の雇用統計の結果は予想より悪かったが、新規失業保険給付申請件数でも分かるように、企業は解雇も新規雇用も控えており、不安定になっているほどではない。
また、FRB幹部の間では、最近の強すぎる雇用市場への懸念がくすぶっていたことを考えると、最近のインフレ率の鈍化傾向を示すデータとあいまって、雇用統計の弱さは景気の減速とインフレ圧力の低下につながり、FRB(米連邦準備制度理事会)が期待していた通りの内容、あるいは、望んですらいた内容となったと見る向きもある。
ちなみに、7月末に発表された6月の個人所得・支出統計では、コアPCE(個人消費支出)物価指数(価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたもの)の伸び率が、4カ月連続で前月比+0.1%と緩やかな伸びを示し、市場予想の同+0.2%を下回った。
前年比でも+1.9%(前月は+2.0%)と3年ぶりの低水準で、FRBが望ましいとするコアインフレ率+1・+2%のレンジ内に収まっている。また、7月18日のベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長による議会経済報告でも見られたように、同議長は、雇用市場のタイトさが続いていることから、「インフレについては、かなり警戒して見ていくべき」と述べており、景気リスクよりもインフレリスクを重視する姿勢を改めて示していることから、インフレリスク重視の姿勢は変わらない可能性が強い。
夏休みで教師が一時的に“失業”して政府部門が急減=民間部門は堅調
今回の雇用統計の特徴は、政府部門が前月比2万8000人減と急減している点で、政府部門を除いた民間部門だけでは、同12万人増となっており、これは5月の民間部門の10万7000人増を上回って、雇用市場が堅調であることを示している。
また、政府部門の減少の大半は、夏休みに入り、州など地方自治体の教職員への賃金支払いがなくなった季節的な要因で、今回の雇用統計の伸びの低さは、割り引いて考える必要がありそうだ。
また、セクター別に見ると、引き続き、製造業が前月比2000人減と13カ月連続でマイナスとなったほか、建設業も前月は増加した非建築部門が大幅減となったことが響いて同1万2000人減、小売業も同1000人減と雇用状況が悪化している。また、6月と同様に、サービス産業がリード役となって、全体の伸びに寄与しているが、サービス産業は、前月比13万3000人増からわずか同10万4000人増と今年に入って最も低い伸びとなった。


